大腸ポリープとは(大腸がんとの違い)
大腸ポリープは、日本では40歳以上の半数程度の方が持っているといわれていますので、あまり珍しいものではありません。ポリープがあると便でこすれて、血便を生じたり便潜血反応が陽性になることがあります。
ポリープという言葉は、「丸くて出っ張っているもの」という意味で、正確に言うと病名ではありません。ポリープには良性の腺腫adenomaや悪性の癌carcinomaが含まれます。また顔つきによっていろいろな種類(ガイドラインでは38種類)があり、良性のものでも放置しておくと早期に大腸がんになる可能性があるポリープもあります。
良性ポリープと悪性ポリープ(癌)の違いですが、実ははっきりと明確に線引きすることができません。切除したポリープを顕微鏡で調べ、そこで見える細胞の形や分裂している核の数などから、良性ポリープか悪性(がん)に近いポリープかを診断していきます。顕微鏡分類はGroup1から5までありますが、ポリープから癌になるのに、おおむねグラデーションのような診断になっています。数字が大きくなればなるほど癌に近くなります。ただし、Group2だけは、ポリープが小さすぎたり、切除するときにポリープがつぶれてしまったことなどにより、顕微鏡の診断の質が低くなるため、本当にがんが含まれて居ないのか、判定が難しいときに使われるグループです。
顕微鏡の診断は、この悪性度を見るだけでなく、ポリープの種類やポリープの根っこの深さなども調べます。このため、どんな種類のポリープで、悪性度がこれくらいで、しっかり内視鏡で切除できているかどうかも分かります。それに応じて今後の検査のスパンも変わるわけです。悪性度が高い方やたくさんポリープがあった方などは半年後にもう一度検査したほうがいい、そうでない方は一年後に検査すれば良いなどとなります。
検診施設や大腸カメラに精通していない医師が検査を行った場合は、ポリープが見つかっても切除せずに検査を終了されてしまうこともあります。勿論おおよそ肉眼でも良性ポリープなのか癌なのか分かることがありますが、当院ではやはり見つけたものは安全にできる限り切除し、顕微鏡でしっかりとした診断をしていきたいと思っています。
大腸ポリープの良性から悪性の分類
Group1:完全な良性
Group2:(どのグループか判定困難)
Group3:良性だが、もう少し成長していたら悪性になるところだった
Group4:癌に近い
Group5:癌
*がんのステージ分類とは全く異なる分類です。
健康とご家族の暮らしを守るために早期発見と治療を
大腸がんは罹患者数が増加し続けており、近い将来、男女ともがんによる死亡原因の1位となると考えられています。発生が増加しているのには食生活の欧米化がかかわっていると考えられており、そして大腸がんの自覚症状がほとんどなく進行してしまってから発見されることが多いことから死亡原因の高さにつながっているとされています。大腸がんは前がん病変の大腸ポリープの段階で切除してしまえば予防でき、定期的な内視鏡検査で早期発見ができれば楽な治療で完治が期待できます。また、その場合は治療が日常生活や仕事にほとんど支障を及ぼしません。
大腸がんの危険因子には、①年齢(50才以上)②大腸がんの家族歴 ③高カロリー摂取および肥満 ④過量の飲酒 ⑤喫煙があげられています。これらに該当すると思われる方は、早めに検査をしてください。
大腸ポリープ切除の日帰り手術
大腸ポリープは内視鏡検査で発見した際に、その場で切除できます。この切除は日帰り手術で入院の必要はなく、その日のうちにご帰宅できます。事前の下剤服用なども1回ですむため、お忙しい方にもお勧めできます。
大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡スコープを挿入し、スコープを一番奥の盲腸まで進ませて引き抜きながら観察します。ポリープを発見したらその場で内視鏡の先端から器具を出して切除し、回収して病理検査を行います。形状などにより切除方法が異なりますが、切除は5~10分程度ででき、痛みや不快感はありません。切除後数日から1週間程度、食事や運動などに多少の制限はありますが、基本的に入院の必要はありません。
ただし、大きなポリープやポリープの数が多い場合や血をサラサラにする薬を飲んでいる場合には入院による切除が必要になる場合もあります。その場合は、連携している入院可能な高度医療機関をご紹介しています。
切除方法
ポリープの切除方法は、形状などによって適した手法が異なります。
ポリペクトミー
ワイヤー状のスネアという器具を使い、通電して焼き切る手法で、ポリープ切除では最も一般的に使われています。ポリープにスネアをかけて締め付け、通電します。周辺組織に熱が伝わって術後に出血などを起こすリスクがあるため、安全性が確認できる場合にのみ行っています。
コールドポリペクトミー
スネアを強く締め付けることで切除し、通電は行いません。そのため、術後の炎症による出血や穿孔のリスクを大幅に低く抑えられます。切除時の出血はすぐに止血されます。
内視鏡的粘膜切除術
ポリープにはスネアをかけることができない平坦なものもあります。その場合に用いる手法がこの内視鏡的粘膜切除術です。平坦なポリープの下に生理食塩水などを注射してポリープを持ち上げてからスネアをかけて締め付け、通電して焼き切ります。この場合、周辺組織とポリープの間に生理食塩水があって熱が伝わることがないため、術後の合併症リスクは低く抑えることができます。
切除後の注意点
大腸ポリープ切除は日帰り手術です。その日のうちにご帰宅いただけますが、ご自宅で安静を保つことが不可欠です。また、出血などの合併症を防ぐために数日から1週間程度、食事や入浴、運動、移動などに多少の制限が必要になります。
食事
ご帰宅したら、その日は消化の良いものを食べます。白粥、うどんがお勧めできます。ポリープ切除を受けた方の検査後食も用意しております。
翌日からは、普段の食事で大丈夫です。ただし数日間は唐辛子など刺激の強いもの、脂っこいものを控えます。
アルコール
切除後1週間、禁酒をお願いします。
入浴
翌日から数日間は短時間のシャワー程度にしてください。バスタブに浸かる入浴は医師の許可が出るまで控えてください。
運動
翌日から軽い散歩程度でしたら可能です。ジョギング、ゴルフ、テニス、水泳、腹圧のかかる運動は1週間程度控える必要があります。
旅行・出張
長時間の移動は1週間程度控えてください。飛行機では気圧の変化により出血リスクが上昇します。車や電車でも座りっぱなしや立ちっぱなし、振動などによる負担が大きいため、1週間程度は旅行や出張を控えていただいています。そのため、出張や旅行のスケジュールが週間程度先まで入っていない日程で検査日を決めるようお勧めしています。