初めに:どのくらい食物繊維を摂ると便秘によいの?
健康維持を目的とした場合、食物繊維を成人では1日24g以上摂ることが推奨されております。ですが、実際の摂取量は平均15gと言われており、現代人の生活様式では推奨量をとることが難しくなっています。
便秘の方の中には、食物繊維の摂取量が少なく便が硬くなっていることがあります。軽度の便秘の方は、まず今よりも食物繊維の摂取量を増やしてみると便秘が解消することが多いです。
*長年便秘がひどい方は、摂取の仕方を間違えるとさらに便秘が悪化してしまうことがあるため、専門医に相談の上開始するようにしてください。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維について
どのように食物繊維は便秘に良い影響を与えるのでしょうか?
どのような食品をとれば食物繊維を摂取できるのでしょうか?
実は食物繊維は、水溶性食物繊維 と 不溶性食物繊維 の2種類に分けられ、摂取したときの効果が違います。
下記にそれぞれの特徴・具体的な食品例を示します。
水溶性食物繊維
特徴:
①水分を保持する(便にうるおいを与える、ゼリー状にする、粘度を付与:ドロドロにする)
②小腸で食物の消化吸収をおだやかにする(血糖値の急な上昇を抑える:糖尿病予防効果、コレステロール吸収を調整:高脂血症予防効果)
具体的な食品例:
大麦、りんご、キャベツ、昆布、ひじき、わかめ、こんにゃく芋など
成分:
ガム質、ペクチン、藻類多糖類、グルコマンナン
下記に細かい説明を記載しております。お時間のある方はお読みください。
【ガム質】植物の分泌液や種子に含まれている粘質物です。ヌルヌルとした物質で便が腸壁に引っかかるのを抑制します。また胃や小腸で他の食べ物を包み込んで消化吸収をおだやかにし糖尿病などを予防する効果があります。便秘の中では、特にけいれん性便秘のかたにお勧めです。
ガム質を多く含む食品:オーツ麦( カラス麦 ) 、大麦 、ライ麦 、グアー豆
【ペクチン】食物の細胞壁に存在する成分です。水を大量に吸いゲル状になり、便に水分を保持する役割を果たします。乳酸菌などの善玉菌を増殖させます。乳酸菌が増やすことで、悪玉菌が減ったり、腸の蠕動運動( ぜんどううんどう )を促し便秘を解消したりします。また発がん物質の発生を抑制するなど効果は多岐に渡ります。特に弛緩性便秘のかたにお勧めですが、摂取可能な量が一人ひとり違うため専門医に相談されてから開始してください。
ペクチンを多く含む食品:りんご などの熟した果物 、キャベツ などの野菜
【藻類多糖類】褐藻類に含まれる多糖類で、海草のぬめり成分です。水を保持する力が強く、便をやわらかくします。ナトリウムの排出を促し高血圧を予防したり、コレステロールを包み込んで体外に排出を促し高脂血症を改善させる効果、小腸での糖の吸収をおだやかにして空腹感を抑えます。また腸内に溜まった老廃物を体外に排出する働きを持ち、悪玉菌を減らし腸内の環境を整えます。特に直腸性便秘のかたにお勧めです。
藻類多糖類を多く含む食品:コンブ 、モズク 、ワカメ 、ヒジキ
【グルコマンナン】こんにゃくに多く含まれる成分で、胃の中で大量の水を吸って膨れるため便の量を増やす働きを持ちます。糖の吸収をおだやかにし、コレステロールの排出を増加させる効果があります。
グルコマンナンを多く含む食品:こんにゃく芋( 注:市販のこんにゃくは不溶性食物繊維です )
不溶性食物繊維
特徴:
①腸の蠕動運動( ぜんどううんどう )を活発にする(便が大腸を通過する時間を短縮する)
※便が大腸を通過するのに長時間がかかると便秘が悪化するため
②水分を含んで膨らみ、便の量を増やす
(特に弛緩性便秘のかたにお勧めですが、摂取可能な量が一人ひとり違うため専門医に相談されてから開始してください。)
具体的な食品例:
きのこ、豆類、野菜全般、エビ、カニ
成分:
セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン
下記に細かい説明を記載しております。お時間のある方はお読みください。
【セルロース ・ ヘミセルロース ・ リグニン】植物の細胞壁を構成している成分です。野菜に多く含まれています。糸状、多孔質のものが多く、ボソボソ、ゴロゴロ、ざらざらした触感が特徴的です。普段生活で摂取している食物繊維の80~90%を占めており、なかでもセルロースが多いといわれています。
セルロース多く含む食品:野菜類、豆類、穀類
ヘミセルロースを多く含む食品:海藻類、野菜類、豆類、穀類
リグニンを多く含む食品:豆類、野菜類、穀類の外皮
【キチン ・ キトサン】甲殻類の殻や菌類の細胞壁を構成している成分です。キチンは、免疫力アップや高脂血症に有効と考えられ、またグルコサミンの原料にもなっています。キトサンは、重金属や有害物質の吸着を行い体外への排出を促します。
キチン・キトサンを多く含む食品:エビやカニの殻、キノコ類
※食物繊維もバランスが重要です。なお食物繊維については、便秘のタイプによって積極的にとっていいものが変わってくることがあります。
必ず消化器内科を受診して、指導を受けてから行うようにしてください。
無理なく上手に食物繊維を摂るために
どのように食物繊維を摂れば量を無理なく増やせるでしょうか? ちょっとした工夫で簡単に増やすことができます。
主食(ごはん・パン)を工夫してみる
白米 → 雑穀米、麦芽米、発芽米
白パン → ライ麦パン、雑穀パン、全粒パン などに変更
白米や白パンはほとんど食物繊維を含んでいませんが、雑穀米やライ麦パンなどは食物繊維が豊富に含まれています。噛み応えもあり、少ない量でお腹いっぱいになるためダイエット効果もあります。
食事のメニューを和食中心に
洋食では、牛肉・豚肉がメインとなり、食物繊維が少なくなってしまいがちです。和食を中心にすることで、豆類、根菜類、海藻類を無理なく上手に摂取することができます。
洋食でもフリーズドライのスープなどを活用
洋食が中心になってしまいがちの食生活のかたも悲観することはなく、野菜 や きのこ が入ったスープを主食に合わせることで食物繊維の摂取量を増やすことができます。
当院では、全身の状態を把握・便秘の病状に応じて、お勧めの食物繊維をアドバイスさせていただいております。
※便秘の状態によっては、食物繊維の摂取で便秘が悪化するかたもおり、そのような場合は内服による治療を優先することがあります。
※長年便秘がひどい方は、腸がねじれていることが多くあります。そのような場合は食事の改善だけでは便秘の解消が難しく、内服薬を用いた治療がメインとなることがあります。