大腸がん
大腸がんは現在、日本で罹患者数が増え続けており、特に女性のがん死亡原因の1位の疾患です。早期発見と治療により完治が望めるがんですが、自覚症状に乏しいため発見が遅れてしまうケースが多くなっています。自覚症状のない早期の大腸がんや前がん病変の大腸ポリープは定期的な内視鏡検査により発見することができ、当院では検査と同時の切除が可能な体勢を整えております。健康診断の大腸がん検診として行われている便潜血検査は確実性が低く、陽性でも大腸がんがないことが多く、陰性でも進行した大腸がんが存在している可能性があります。大腸がんの約3割の方が便潜血検査にひっかからないのです。確実な早期発見につながるのは大腸内視鏡検査ですので、リスクが高くなる40歳を超えたら症状がなくても内視鏡検査を検討いただくようお勧めしています。なお当院では痛みや苦しさのない内視鏡検査を行っており、一人ひとり丁寧に精度の高い検査を行う体制を整えております。安心してご相談ください。
大腸ポリープ
大腸ポリープは腫瘍性のポリープと非腫瘍のポリープに分けられ、腫瘍性ポリープである「腺腫」は、放置するとがん化することがあるため、切除することで将来の大腸がん予防につながります。病院やクリニックによっては大腸ポリープが発見されても、医師のレベル・検査体制・マンパワーの問題から別日に切除を行ったり、入院が必要なことがあり、つらい大量の下剤を2度飲むことがあります。当院の医師は、大学病院の大腸内視鏡専門スタッフとして研鑽を積んできましたので、外来で大腸ポリープを発見した際もその場で安全に切除する日帰り手術が可能となっております。
直腸カルチノイド
日本人では結腸の中では直腸に発生しやすく がんに似ております。小さいうちは転移はほとんどありませんが、10mmを超えるとリンパ節や肝臓への転移リスクが上昇します。悪性か良性かは大きさや切除後の組織像で判断します。また小さなものは粘膜の下に隠れていることが多いため注意深く観察が必要です。発生頻度が高くない腫瘍ですので、専門的な検査と治療が不可欠です。
大腸憩室症
憩室は袋状に飛び出た組織で、それ自体は症状を起こすことはありませんが、炎症などによって痛みや下血などを起こします。約10%の方にあるとされているため珍しいものではありませんが、自然に消えることはありません。憩室があるとポリープもできやすい傾向があるため、経過観察を行っていく必要性が高くなります。また宿便が溜まるポケットになるため定期的な排便コントロールも重要となります。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
大腸に慢性的な炎症を起こす疾患で、炎症が改善と悪化を繰り返します。免疫が関与していることはわかっていますがはっきりとした原因はわからず、完治に導く治療法がないため難病指定されています。ただし炎症を抑える治療により寛解状態を長く継続することができます。寛解になっても再発を防ぐためには治療を続けて適切に腸の炎症状態をコントロールし続けることが不可欠です。炎症が長期間続くと大腸がんリスクが上昇するため、内視鏡検査を定期的に受けることも重要です。発症年齢のピークは20歳代ですが、高齢者にも発症することがあります。適切な治療を地道に続けることで、発症前とあまり変わらない生活をすることが可能です。似た病気にクローン病がありますが、クローン病は口から肛門まで消化管全域に炎症を起こすため栄養療法が必要になるなど治療法も異なる病気です。正確な診断のためにも、必ず専門的な治療ができる消化器内科を受診してください。
直腸潰瘍
直腸下部に発生する潰瘍で、粘膜表面の浅い位置に生じます。自覚症状には下血があり、便器が赤くなるほど大出血を起こすこともあります。出血以外の症状に乏しいため、出血がないと気付かず、他の病気の検査で発見されることもあります。栄養が不足している方や、高齢者などに発症が多い傾向がありますが、原因はよくわかっていません。
大腸メラノーシス
大腸粘膜が黒っぽくなりますが、これは色素沈着が起こっているだけで特に症状を起こすわけではありませんし悪影響もありません。原因の多くが便秘薬の常用で、センナや大黄が含まれた薬剤の服用が長くなると発症します。メラノーシスが確認できる場合、薬剤の刺激にさらされ続けて大腸の機能が鈍くなっており、深刻な便秘になっていることが多い傾向があります。そのため、内視鏡検査で大腸メラノーシスが確認できた場合には、便秘のお悩みがないかを確認し、適切な治療による解消をお勧めしています。またメラノーシスの人には、大腸ポリープが多いことも知られております。大腸ポリープは大腸がんのリスクになるため、メラノーシスの治療も有効と考えられます。
カンピロバクター腸炎
カンピロバクター属の細菌感染によって起こる炎症です。カンピロバクター・ジェジュニという細菌が原因となることが多く、日本で発生した食中毒では件数や患者数がサルモネラ感染症と並んで多くなっています。症状は腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、発熱などが主に現れますが、血便を生じることもまれにあります。原因となるのは鶏肉が多く、数日で回復することがほとんどですが、再発することがあり注意が必要です。
腸管出血性大腸菌感染症(O-157)
大腸菌はヒトの腸管内に普通に存在する細菌であり、ほとんどは無害ですが、ベロ毒素を産出することで深刻な症状を起こすものもいくつか存在します。特に有名なのはO-157です。数日から1週間程度の潜伏期間を経て下痢や腹痛を生じ、多くは血便を伴って便成分の少ない血便を起こすこともあります。他に発熱を伴うこともあります。消化器内科を受診して、安静を保ち、十分な水分補給と絶食から徐々に消化の良いものを少しずつとることが重要です。ただし、自己判断で市販の下痢止めを服用すると体内に毒素が長時間とどまって症状を悪化させてしまうため危険です。また下痢で水分補給が困難な場合は脱水症状を起こしやすいため、点滴による輸液が不可欠です。溶血性尿毒症症候群などの危険な合併症を併発する可能性があり、二次感染を起こしやすく、強い酸抵抗性を持っていますので、感染を広げないためには注意が必要です。